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源氏は、他から耳に入ると気まずいと思って、嵯峨野の御堂にかこつけて 紫の上に明石の君が上京したことを知らせる。【第18帖 松風】

源氏物語591 第18帖 松風15】源氏は、他から耳に入ると気まずいと思って、
嵯峨野の御堂にかこつけて 紫の上に明石の君が上京したことを知らせる。

横になっていた尼君が起き上がって言った。

身を変へて 一人帰れる 山里に

聞きしに似たる 松風ぞ吹く

 

女《むすめ》が言った。

ふるさとに 見し世の友を 恋ひわびて

さへづることを 誰《たれ》か分くらん

こんなふうにはかながって 暮らしていた数日ののちに、

以前にもまして逢いがたい苦しさを切に感じる源氏は、

人目もはばからずに大井へ出かけることにした。

 

夫人にはまだ明石の上京したことは言ってなかったから、

ほかから耳にはいっては気まずいことになると思って、

源氏は女房を使いにして言わせた。

「桂《かつら》に私が行って

 指図をしてやらねばならないことがあるのですが、

 それをそのままにして長くなっています。

 それに京へ来たら訪ねようという約束のしてある人も

 その近くへ上って来ているのですから、

 済まない気がしますから、そこへも行ってやります。

 嵯峨野《さがの》の御堂《みどう》に

 何もそろっていない所にいらっしゃる仏様へも

 御挨拶に寄りますから二、三日は帰らないでしょう」

 🪷孤影written ハシマミ🪷

 

 

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